本のはなし

【前田裕二著「人生の勝算」】「努力が報われない」から抜け出す方法とは?

2018年6月21日

こんにちは、もとみんです。

3日ほど前、ネットで前田裕二さんの著書「人生の勝算」を試し読みしたらすごく興味深い内容だったのでさっそく購入しました。 

前田裕二さんは、先日石原さとみちゃんとの熱愛が騒がれたSHOWROOM株式会社の社長です。経歴はコチラ。

 

・1987年東京生まれ
・早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社
・ニューヨークに移り、北米の機関投資家を対象とするエクイティセールス業務に従事。株式市場において数千億〜兆円規模の資金を運用するファンドに対してアドバイザリーを行う
・株式会社DeNA入社、仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる
・当該事業をスピンオフ、SHOWROOM株式会社を設立
・同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合弁会社化。現在はSHOWROOM株式会社代表取締役社長

QREATORS | プロフィール / SHOWROOM株式会社代表取締役社長・前田裕二

 

これだけ見ると「THE・起業家という感じ!めっちゃ頭良さそう!」という気分になりますが幼少期はなかなか苦労したようです。そして元V系バンドマンというところが面白い!

この「人生の勝算」という本は、今迄読んだ起業家の本とは少し違う感じがしました。

文章はゴーストライターかもしれませんが、「俺が世界を変えてやるぜ!」的な熱血リーダー感がありました。バンドがステージに立っている時「ついてこーい!!!」と叫んだりしますけど、正にあんな感じですね。とにかく熱い!

この本は前向きに頑張りたい人なら元気になれるし、音楽とか芸能やエンタメが好きでそういう分野で一花咲かせたい人なら共感するだろうし、SNSをやっている人ならみんな納得するのではないかと思います。

たぶん、twitterやインスタグラムでイイネが欲しいと思っている人ならだれでも求めていることの答えが書かれています。それは例えばこういうことです。

 

  • 盛りに盛って完璧なインスタ映えする写真をアップした。
  • それなのになぜ、あの人より「イイネ」が少ないの?

 

これの答えはなにか?

 

こういった「努力してるけどなぜか報われない」に効く内容だなぁと思ったので、本の感想を交えつつそんなところを考えてみたいと思います。

 

今回おはなしする本はコレ!

人生の勝算 (幻冬舎文庫)

 

どうすればストリートの弾き語りで1万円稼げるか?

前田社長は物心ついたときから父親がおらず、母親は8歳のときに他界、その後は親戚に預けられたりしつつ10歳上のお兄さんと暮らしてきたそうです。

真偽のほどはわかりませんが、お兄さんは医者を目指していたものの彼を育てるために夢を断念したのだとか…なんだか映画になりそうなバックグラウンドですね。

そして12歳のときにギターでストリートの弾き語りを始めます。小学生の時点ですでに「なんとか自分で稼いで生きて行きたい」と思っていたそうですから意思がスゴイです。

ストリートミュージシャンのサクセスストーリーにはゆずの例などがありますが、一部を除いて基本的にはお金を稼げないでしょう。

だって会社帰りに駅前で歌ってる兄ちゃんを思い出してください。思い出の曲を歌っていたら思わず小銭を出すかもしれないけど、1万円サクッと出すのはなかな勇気がいるのではないでしょうか?

ところが前田社長は小学生の頃、歌を歌って1万円をもらった経験があるのだそうです。とはいえ初めからそれが出来たわけではありません。

当初はオリジナル曲を作って歌っていた前田社長ですが、数百円程度にしかならなかったため場所を葛飾から白金に移動します。しかしここでもなかなか聞いてもらえない…だから作戦をかえ、白金の人々が耳を傾けてくれそうな「皆が知っている既知の曲」を選曲したのです。

この選曲がまた面白くて、テレサ・テンや吉幾三を歌っていたそうです。ギャップがすごい!!

しかしこのギャップが道行く人の興味を引き、だんだんと常連さんができたのだといいます。

そうしてある時、女性からリクエストを受けます。しかし知らない曲だったので、練習してくるから来週また来てくださいと「次の約束」を取り付けます。オイオイそれモテ男の恋愛テクと同じ手法やん!って心でツッコミをいれましたが、これこそが相手の心を捉えたのだそうです。

一週間自分のために練習してくれたという過程にストーリー性に感じ、特別な感情移入と共感が生まれる。こうして「ヒト対ヒト」の絆を作る。

駅前のミュージシャンが「自分の歌を聞いてください」というのは「モノ対ヒト」であり、これは一方的なものなのでダメなのだそうです。

前田社長はこれを「絆」と言い、この絆がただの曲を特別な曲に昇華していくと書いています。

以前どこかで聞いたことによれば、「商品の値段=原価+労働による付加価値」で、その付加価値部分が「利益」になっているということでした。

ということは、前田社長の言う「絆」とは「付加価値」のことです。なんの変哲もない野球ボールに有名選手がサインを書いたら激レア商品になった、みたいなことですね。

「人は信頼にお金を出す」というのは聞いたことがありましたが、この本の第一章では「人は絆にお金を払う」という言葉が使われています。この本の発行は2017年6月30。まだ去年のことなので、ばりばりSNS時代に合致する言葉だと思います。

モノよりもヒトとの絆に価値を見出す…インスタ映えする商品そのものより、その写真を共有することのほうが大事だという現象は、確かにそれを裏付けているような気がしますね。

 

「好きなことで食べていく」を可能にするためには?

わたしはバンドが好きだし長らくV系ファンだったので、その関係の記事で何度かこの事について嘆いてきましたが、音楽で食べるって本当に大変なことだと思います。バンド好きじゃない人でも、例えば恋人や子供や親しい人が「仕事を辞めてバンドで食べていくよ!」と言ったら十中八九止めるでしょう。

前田社長は大学時代にバンドをやっていて、いくつかオファーも受けていたそうです。ということは結構人気のバンドだったということですよね。

しかし、ご本人いわく自分のバンドは顔も歌もそこそこだったそう。自分達よりずっと上手くて才能のある先輩バンドがいるのに、その人たちが売れないのはおかしいと思ったそうです。

たしかこれ↑はキングコングの西野亮廣さんとの対談で読んだ下りだったと思いますが、西野さんの応答には「自分のライバルを心配するの?」という雰囲気が漂っていて面白かったですね。芸人もバンドも自分が勝ち上がってなんぼの世界だと思うので、このニュアンスはちょっと分かる気がします。

しかしこの本を読んでいると、

「頑張って努力した人が報われる社会であってほしい」

「才能がある人が売れないのはおかしい」

「人は努力と情熱次第でどこまでもいける」

といったニュアンスの言葉がたくさん出てきます。

こういった言葉のほとんどは世間から「綺麗事言ってんなよ」で一蹴されますが、そこを敢えて「いやいや、だってそうでしょ」って具合に断言してくれるのは清々しい気がします。

とはいえ、どんなシーンでも必ずこの論で突破できるかといえば難しいのでは…と思ってしまいます。実はちょうど今、最近知り合った方から「コネがないと自分の業界は難しい」というメッセージをもらって、やはりこれが現実だよな…と切ない気分になりました。

しかしこの前田社長にもピンチな時があったわけです。でもそれを乗り越えた。

じゃあどうやったかといえば、「圧倒的な努力」です。

まじまじこの本を見てみると「努力」という言葉が結構出てくるのですが、そういえば起業家の話ではよくよく「努力」というキーワードが出てきます。

例えばホリエモンこと堀江貴文さんは、当初は特別努力してない的な発言をしてましたが、最近は普通の人の数倍は努力してるよってなことを言っています。でもご本人はそれを努力と思っていなかったので、別に努力はしてないと言っていたのですね。

「音楽で食べる」とか「好きなことで食べる」とか、確実に不可能かといえばそうじゃないのかもしれません。但しそこに至るまで圧倒的に努力する必要があり、そうすることはもはや前提。

前田社長が言っているのは、そこまでの努力をしても認められないのはおかしい、ということなので、とにかくまずは圧倒的な努力する必要がありそうです。

 

どんなことを努力すればいいのか?

一言で努力といっても、いったい何をどこまでやればいいのだろう…と個人的には思ったりします。

例えばデジタル漫画はどこまででも際限なく描きこみができるため、自分で「このクオリティでOKにしよう」としなければ終わりがなくて困ると、週刊少年ジャンプ連載中の「食戟のソーマ」作画担当の佐伯俊先生がおっしゃってました。

この本の中では「お互いに広義の承認欲求を満たしあうことは人の根源的な欲求」と書かれています。

SHOWROOMはライブ配信サービスのため、ライブ配信したい配信者と、それを見て応援したい視聴者の両方のニーズに応えています。このキモは「ある意味両方が主役」だということです。ただ見ているだけでは「他人の物語」を垣間見ているだけ。しかしそこに参加すれば、視聴者にとっても「自分の物語」になる。

以前2chの良スレって皆が参加できる最高のエンタメだよね!という想いを一人せつせつ綴ったのですが、まさにこれと同じことが書かれていたので勝手に感動しました。

そんなわけで、専門的な技術や知識を蓄える努力というより、ここで必要とされるのは「相手を自分の夢にひきこむ努力」ということになります。キンコンの西野さんは「共犯者」と呼んでいるそうですが正にそれですね!

エンターテインメントって「相手を楽しませる」というイメージでしたが、今はもう違うんですね。自分も相手も楽しんで、両方が主役になって、その境界がなくなる。ここまでいくとコミュニティにおいて強固な絆が生まれるそうです。

「ああ、そういえばそうだ!」と思った実例があるのですが、バンドのLIVEによく行っていたころ、ある時期を境にお客さんのノリが変わったんですよね。それまでは、観客としてちょっとノりながら聞くという雰囲気だったのが、あるときから全曲フルで客席みんなが踊るという風潮がでてきました。これはその後主流になったと思います。

よくよく考えてみると、全曲フルで一心不乱に踊るということは、ほぼステージの上を見ていません。ということはほぼバンドマンのことは見ていないわけです。しかし、「参加」しています。

同じ日、同じ時間、限られた人間だけが一体となってその空間を作りだしている。もしこの日がメンバーの誕生日だったりしたら最高ですね! その日そこにいた人達だけしか共有できないストーリーは、正に「絆」といった感じです。

ファン達は、時に自ら色々なアイディアを出してメンバー達にサプライズすることがあります。そうするとメンバーも感動しますよね。

こういった出来事は拡散され、メンバーが自ら何かをしなくても自動的にバンドの宣伝になったりします。これはいわば、宣伝や営業をどこかに外注しているのと同じことですよね。

 

完璧じゃないものが愛される

個人的な好みでバンドの例にしてしまいましたが、こうして相手と絆を深め、自分の夢にひきこみ、同じストーリーを見るようになれば、夢は叶っていくというわけです。

こう書くと「やはりコミュニケーションか…壊滅的なコミュスキルしかないワシにはむりだよ…」みたいな気分になりますが、今回は単純にスキルを高めるというより、どこまで自己開示できるか、というのがポイントなのかな?と思いました。

たとえば表面上うまくやれる人ってたくさんいます。わたしは人づきあいがめっちゃ下手なもんで、いつも上手い人を見て「おお、こういう時はこう言えばいいのか!勉強になるな!」と思うのですが翌日には忘れてしまいます。困ったもんです。

しかし「うまくやる」と「自己開示」ってちょっと違いますよね。

そもそも、本当の夢を語れる人ってそばにどのくらいいるでしょうか? しかもそれを語って、応援してくれる人ってどのくらいいるでしょうか?

そう考えると、受け身ではいけないのだな…ということを痛感します。自分と同じ夢を語れる人やコミュニティ、応援してくれる人がいる場所に自ら出向かなければならない。そして、その人たちとストーリーを共有することが重要になる。

ちなみに前田社長によると、応援される人というのは「完璧じゃない」方がいいのだそうです。自分達がいないとダメだ!というのが、その人を支えるモチベーションになるそうです。

この論でいくならば、やはり努力する方向は「技術」などではないということになります。むしろちょっと周囲を頼りながら、それでも一生懸命頑張ること。

もちろん「資格試験に合格するのが夢なんだ!」とかの場合はしっかり勉強しないといけないと思いますが、仮に…仮にそこで失敗したとしたらですよ?多分それが一つのストーリーになるんですよね。で、それに対して「自分も失敗したんだよ!」って共感者が出てくるかもしれない。

こう考えると人生って意外といろいろ可能性があるのかもしれませんね。前向きに考えればですが!(笑)

 

熱量がないと本気だと伝わらない

こういうビジネス書を読むとき、せっかくだし自分の人生に活かしたい!と思うのですが、いかんせん自分に当てはめるとどこをどうすればいいのかが分かりません。個人的にそこをなんとかしたいです。働いてくれ、想像力…!

わたしの知り合いに、ギターの弾き語りが趣味で、それこそストリートで歌ったり作曲したりしている人がいます。学生時代からギターが趣味で、本当はプロ志望でしたが断念して趣味として続けています。

その人はとてつもなく人脈が広く、どうしたらそんなに多くの人に慕われるのかと驚くくらいなのですが、いかんせん人が良すぎてよく色々なものに騙されます。

このほどその人が焼肉屋をはじめるらしいのですが、特別焼き肉好きでもないのになぜそれなのだろうと疑問に思いました。起業に興味があることは知っていましたが、事業の中でも飲食店はかなり大変ですよね。

仮に実際のやりくりは雇用した店長に任せてオーナーになるとしても、そもそも元々の仕事がそれほど上手く回っておらず掛け持ちで働いている人なのです。それではますます趣味の時間がなくなり、本当に好きなことから遠ざかるのでは…と勝手ながら心配しています。

その知り合いはすごく人脈があるわけだけど、自主製作のCDを出して販売したとき、1~2人しか買ってくれなかったんです。人脈=応援してくれる人の数、ではないということですね…。

もしかしたら「夢を語る」ということ自体、思ったより難しいことなのかもしれません。もしくは、語ったとしてもそれが心底本気だと伝わるくらいの熱量がないと、やはりダメなのかもしれません。

 

さいごに

この本にはもっと有益な情報が満載だったのですが、いかんせん全部書いていると大変なことになるので、もしご興味がありましたら読んでみてください!バンドマンとかは本当に通ずるものがあるのではないかと思います。 

 

人生の勝算 (幻冬舎文庫)

 

ちなみに前田社長はV系バンドマンだったとのことで、V系好きのわたしとしては何というバンドだったのか知りたく調べたのですが、残念ながら情報が出てきませんでした。きっと前田社長は周囲に信頼されているんでしょうね…! 

大学時代とのことなので2005~2009年あたりに活動していたバンドだと思いますが、個人的にめっちゃ気になるのでご存知の方がいらっしいましたらどうか教えてくださいm(_ _)m

そんなわけで、次はようやくゲットした落合陽一さんの本を読みたいと思います。

ではでは、また!

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